北は山、南は海の神戸。電車と言えば、JRも阪急も阪神も山陽も基本は東西に延びている。その中で急勾配をもろともせずに山に登っていく電車がある。「神戸電鉄」愛称は「神鉄(しんてつ)」。
新開地から鈴蘭台駅に向かい、そこから有馬・三田に向かう有馬線・三田線、三木の方に向かう粟生(あわ)線に分岐する。新開地から鈴蘭台駅までの 15分間ほどの乗車でも山岳鉄道の雰囲気を十分に楽しめる。今回はその区間を紹介しよう。
スタートは神戸高速鉄道の新開地駅。新開地駅を出たら、あっという間に湊川駅に着く。ここまでは地下。実は、昔は湊川駅が始発だった。その頃は地上に駅があった。阪急、阪神、山陽に接続するために新開地駅と接続するときに地下駅になった。接続と言っても、ホームは別。神戸電鉄は狭軌、その他の私鉄は標準軌なので乗り入れはできません。なぜ狭軌かというと、昔の国鉄有馬線(有馬と三田を結んだ有馬鉄道を国が買い取った)と接続しようという計画があったからだそうだ。
湊川駅を出たら地上に出る。ここからグイグイ登っていく。湊川駅の次は長田駅。この長田駅はJRの新長田駅や地下鉄の長田駅とは全然違う場所にあるため、社内放送では、混乱を避けるため「神鉄長田駅」と呼ばれている。
長田駅の次は丸山駅。このあたりは、山の斜面に住宅が張り付くように建っている。これらの風景から見ても急勾配を登っているのはわかるだろう。
丸山駅の次は鵯越(ひよどりごえ)駅。鵯越は源義経が一の谷の戦いで、馬で駆け下りた「鵯越の逆落とし」で有名なぐらい勾配がきついところだ。ということで、この駅の前後も勾配がきつい。勾配だけでなくカーブもきつい。カーブのきついところには、脱輪防止機構がついている。
鵯越駅の次は鈴蘭台駅なのだが、その間に昔は駅だったという跡が見えてくる。2005年に使われなくなり、2018年に廃止になった菊水山駅だ。元々ハイカーにしか利用されない「秘境の駅」だったので廃止になったと聞いている。旧菊水山駅を通り過ぎたら、長~い菊水山トンネルに突入。この菊水山トンネルは石井ダムの建設にあたってルート変更になって出来たもの。おそらく神戸電鉄の中で一番長いトンネルだと思う。そこを抜けたら鈴蘭台駅だ。
鈴蘭台駅は車庫でもあり、神戸電鉄の車両のバリエーションをいくつか見ることが出来る。番号で系列が分けられている。現役車両の旧いものから 1000系、2000系、3000系、5000系、6000系がある。1000系は速度計もアナログでずいぶん旧さを感じる車両で、実際の走行はずいぶん減っているようなので、乗れたらラッキー?か。車両の先頭にはもれなく、神鉄のマスコットキャラクターのシンちゃんが乗っている。
これらの車両は、やはり山岳向けの特別仕様になっているらしい。普通は4両編成だと1両目と4両目が駆動モーターの車両で、2両目と3両目はモーターのない客室車両であることが多い。神戸電鉄は急勾配を登るため3両以上に駆動モーターが付いている。
下りはブレーキが命。一般的には鋳鉄のブレーキシューで摩擦によってブレーキをかける。これだとブレーキが熱を持って最後には効かなくなってくる。クルマも下りでずっとブレーキを踏んでいるとフェード現象で効かなくなってくる。それと同じだ。そこで、一般的なブレーキに加えて、モーターを発電機代わりに使う回生ブレーキ(最近ではハイブリッドエコカーにも採用されている)を搭載し、減速から停止までを回生ブレーキで行っている。ブレーキシューを使ったブレーキは車輪のロックにのみ使うぐらいらしい。また、緊急事態に使う非常用ブレーキも備えている。
線路が狭軌ではなく標準軌であれば、阪急や阪神との相互乗り入れとかあったのかなと考えていたが、そう簡単にはいかないね。
さて、鈴蘭台駅からは、東へ有馬・三田方面、西へ三木・粟生(あわ)方面へと別れていく。西鈴蘭台へ行くルートは、線路わきに50と書かれた標識がある。これは 50‰ (パーミル) の勾配のことだ。50‰ というのは、1000m 進んだら 50m 登っているという意味。5% 勾配と同じだ。
ちなみに鈴蘭台駅は標高 278m、湊川駅が標高 0m なので、かなりの勢いで登ってきたことになる。最も標高が高いのは有馬温泉駅で標高 357m。
昔は、有馬・三田方面は神戸有馬電気鉄道、三木方面は三木電気鉄道が経営していた。この2社が合併して 1947年に神有三木電気鉄道になり、1949年に現在の神戸電気鉄道に社名変更となったそうだ。この変化の激しい時期の社長が、先週の記事「萌黄(もえぎ)の館」の主の小林秀雄氏だ。
冒頭にも書いたとおり、ちょっと山岳鉄道の雰囲気を味わいたかったら、新開地駅から鈴蘭台駅までの約15分でも、そこそこ楽しめる。神戸に遊びに来た時にちょこっと乗ってみるのもおすすめです。もちろん有馬温泉まで足を延ばすというのもありです。
いいね。やっぱり神戸が好き
もっと KOBE ずっと KOBE
ではまた次回をお楽しみに ♣